高齢出産母ちゃんの思いつき日記

Yahoo!ブログより、お引っ越ししてきました。

八日目の蝉  ~角田 光代さん

ドラマや映画化されていますが、あえて原作を読みました。
 
子どもを誘拐・・・一番罪の重いことであり、許されないことだけれど、
犯人の女の子どもを愛おしむ思いが伝わりすぎてきて、何度も泣けてしまった。
 
でも、誘拐された母親の思いになると、これまた耐え難い苦しさを思わずにはいられない。
 
しかし、読み進めれば進めるほど、あともう少しだけでいい、一緒にいさせてあげてほしいと思ってしまう。
 
結局、逃げて捕まるまでの間、たくさんの女たちに助けてもらいながら、血のつながらない親子は、
生きていく。
 
この本に出てくる男は、ろくなやつがいない。
不倫して、不倫相手に子どもができても堕ろしてほしいと勝手なことをいい、
なんだか自分のことしか考えていないというか・・・。
とにかく、なさけないのだ~~。
まぁ、自分に妻子がいながら、そういうことをするということがすでに無責任きわまりなく、
私は大嫌いなタイプだけれど、人間、そんなに強くもないしね。
でも、強くないからといって、人を傷つけてはいけない・・・。
ここに出てくる男たちは、悲しいほど女たちを心も体も傷つけ、全く同情の余地がない。
世の中、そんな男ばかりではないのだけれど、「いったい男の存在とは?」と問いかけたくなるくらい
情けない男が出てくる本。
そのせいか、女の力のすごさもさらに強調されている気がする。
 
1章と2章にわかれていて、1章が逃走中のお話。
2章は、誘拐された女の子が大学生になってから、それまでのことを回想しながら話が続く。
そして、なぜだか血のつながりはないのに、犯人と同じように不倫をし、身ごもってしまう。
ただ、違うところは、堕胎せず産もうと決心するところ。
 
とにかく、子どもへの愛があふれるほど強く感じる主人公たちなのだ~。
 
そして、みんな「女」から、「母」になっている。
母は、どんなときも決してあきらめない。
どんなときも、子どものことを考えている。
自分よりも大切なものを守ろうとする。
 
母とは、そういうものだなぁと、つくづく思う。
母は、性別では確かに女なのだけれど、女という次元とは何かちがうところにいるような
不思議な存在のような気がしてきた。
そういうことも再認識させられる一冊だった。
 
八日目の蝉・・・蝉は地上に出て、七日しか生きていられないけど、
八日目まで生きてしまった蝉は、他の蝉とは違って見なくてよかったものも見てしまう・・・。
そんなネガティブな思いから、
他の蝉が見られなかったものも見ることができる・・・に変わっていくところが、
暗いテーマながら最後は何か光が差し込んだような気がした。
 
ドラマや映画もあるけれど、これから見るには悲しくなって見られないなぁと思った一冊でした。