高齢出産母ちゃんの思いつき日記

Yahoo!ブログより、お引っ越ししてきました。

“It”(それ)と呼ばれた子(幼年期編) デイヴ・ペルザーさん

この本は、とっても悲しいけれど児童虐待を母親から受けた作者のノンフィクションで、
幼年期編から少年期編、完結編と大人になり自分も親になってまでが書かれています。

虐待の様子は読んでいても、涙が出るほどかわいそうなのだけれど、
された側の少年の気持ちの中には、そこまでされても「母に愛されたい」とけなげさがあって
なんともいえない気分になりました。
もちろん、虐待をした母親の気持ちはわかりません。
なぜ自分の産んだ我が子にそのようなことができるのかも、私にはとっても理解できないけれど、
ただ救われるのは、この作者が虐待によって自暴自棄にならず、学校の先生方など周囲の大人に
なんとか救われて生きてきたことです。
少年期、完結編ではいろいろと問題も起こすけれど、
「虐待された子は、親になると、また自分も虐待を子にしてしまう」という
よく言われる俗説的なことはなく、とても息子を愛していて(離婚してしまうけど)
親としての責任を果たそうとしているところはよかったなぁと思いました。

「虐待された子は、親になると、また自分も虐待を子にしてしまう」とよく聞くけれど、
私は逆じゃないかなぁって、いつも思うのです。
自分がつらい目に遭っているからこそ、我が子にはしたくないって思う親のほうが多いと
思うんです。
もちろん、不幸にも愛情を注がれずに育った人もこの世にはたくさんいるでしょうけど、
「愛情を注いでくれるのは、必ずしも親だけじゃない」って気づいた人たちは、立派な
大人になってると思うんです。
親の愛は無償のはずだけど、親以外にも無償で愛を注いでくれる人はいるって思います。

それと、日本も決してこの作者のような人、いないとは言い切れないし、やっぱり周りの
大人たちが子どもを守ってあげないといけないって強く思います。
自分も子どもと関わる仕事をしているし、今までも親に虐待を受けた子を見てきたし、
その子を救うのに児童相談所と連携を計りながら親と話し合いをもったこともありました。
なので、絶対に目をそらさないで、子どもたちを見守るのが、私たち大人の責任だと思うのです。
子どもは、親の宝、地域の宝、国の宝のはずです。
そんなことを思った一冊でした。

ヴィレッジブックス ソニーマガジンズ より文庫本で出ています。650円+税